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「まぁまぁ、いいじゃないの。精命を奮発するから。さ、行くわよ、フラーミィ!」
アイラはスリッパをつま先で横に押しやりました。そしてちゃっかり履いていた靴下で、音がしないように足を滑らせ、歩き出しました。そしてドアをそーっと開けると、左右を見回し、振り返りました。
「それで? 鈴の音はどっちの方角から聞こえたの?」
「アイラ……、やみくもに突進するのはおやめください」
「分かった分かった。でも、罠をかけるのって楽しいね」と言って、抑えきれない笑みをこぼしました。
「寝ていてください……と言っても無駄なようですね。仕方ありません。逃げられては、せっかくの罠が無駄になりますから」
私は影の姿で廊下を刷くように滑ると、罠を仕掛けておいた隣室のドアの隙間から滑り込みました。アイラがドアを勢いよく開けると、クローゼットの中から、毛糸が身体に絡みついて身動きできなくなった黒猫がいました。口には白いモノを咥えています。
「はーっはっは! 捕まえたわよ! 神妙にしなさい」
アイラは腰に手を当てて、勝ち誇ったように高笑いしました。金色の髪が、窓からの月明かりに無駄に美しくキラキラと揺れています。
「こんばんは」私は黒猫に声をかけました。
「にゃあ」
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