トゥラナ

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「けっこうニャ? 可愛く言っても誤魔化されないわよ。なんでなの?」 (ああ……。気づかなかったフリをする……などという気遣いは、アイラには無縁でしたね……)  私は額に指先をあて、こっそりため息をつきました。  案の定、紅霧は照れ隠しに後ろ足で耳の後ろをカリカリカリカリカリカリカリ……と激しく掻き始めました。永遠に続くかと思われたカリカリでしたが、アイラの氷の視線に耐えかねたのか、そうっと前足を下ろすと、ようやく、ボソボソと聞き取りにくい早口でつぶやきました。 「なんで、って、危険だからさ。あたしにとって、一番壊れちゃいけないものは、桐子。でも桐子は亡くなって、もうこの世界にはいない。桐子の次はアイラ、あんただからさ。逆さ鏡のそばに近寄らせたくないんだ」 「わ、私のことよりも、逆さ鏡をどうにかする方が大事でしょ!」アイラは頬を真っ赤に染め、そっぽを向きました。 「おやおやおや? 照れているんですか?」 「なっ、なにを言って……!」  アイラが真っ赤になって、言葉を詰まらせました。これは珍しい……。私はアイラの近くに寄って、じぃっと観察しました。
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