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アイラは隠していますが、抑えがたい不安が少しずつ、胸を圧迫しているようです。その証拠に、胸の前でしっかりと腕組みをして、ともすれば震える手を押さえつけています。
私たちは、黙ってトゥラナをくぐり続けました。トゥラナはまるで歩く速さで生まれているかのように、いつまでたっても終わりがありません。
「少し、休みましょうか」
私はアイラを促して、立ちどまりました。するとトゥラナも増殖をやめたようでした。
「キリがないわ。戻りましょうか」
アイラが向きを変え、一歩踏み出すと、ガラッというような、何かが崩れる音が聞こえました。
「なに?」
目を凝らしてみると、見えている一番遠くのトゥラナが崩れ、何もない空間に落ちていくのがチラリと見えました。
「嘘……! 崩れてく……」
「逃げましょう!」
私はアイラの手を引いて、走り出しました。背後からトゥラナの崩れる音が追いかけてきます。そして壊れたトゥラナが、何もない空間に崩れ落ちていくのがはるか下に見えました。振りかえると、先ほどは永遠に続くかと思われたトゥラナの連なりが、どんどん短くなっていました。
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