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「なっ、なにっ?!」スピードは落ちたものの、走り続けているので、息が上がって返事をするのも苦しそうです。 「あれを見てください」 「紅霧……」  前方のトゥラナの下に黒猫がちょこんと座っています。後ろ足で、耳の後ろをカシカシ、と掻きました。その様子はのんびりとして、「早く来なさいよ」とでも言っているようです。いくら進んでも変わらない周囲の景色に、永遠に走り続けなければならないような感覚に陥っていましたが、近づいて来る紅霧に安心しました。  紅霧はピンク色の肉球を見せて、「にゃん」と鳴きました。 「止まれということでしょうか?」 走ることにも飽きてきたので、隣で「走れ」と騒ぐアイラは無視して、私はスピードを緩め紅霧の前で足を止めました。背後のトゥラナの崩壊が徐々に近づいてきます。 「こっちへ」紅霧が招き猫のように、チョイチョイ、と手招きしました。  慎重に足を一歩進め、紅霧と同じトゥラナの下に入ると同時に、たった今立っていた真後ろのトゥラナが、音もなく崩れ落ちて行きました。  同時に私たちがいるトゥラナが、垂直に下降し始めました。アイラの金色のツインテールが真上に立ち上がり、ひらひらと揺れているところをみると、どうやら落下するのとほぼ同じスピードのようです。
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