2

6/13

81人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
「奈落さ。アイラとフラーミィは奈落に落ちなくてよかったね」 「怖い事言わないでよ、紅霧」 「おや! 本当の事だよ。ブラックホールみたいなものだね。次元の世界の墓場さ」 「次元の世界の墓場……?」アイラはブルッと身震いしました。 「そう。そしてここは、水神様の湖の底だよ」 「ここが水神様の地なのですね……」  私は周囲をぐるりと見回しました。初めて見る景色なのに、どこか懐かしさを感じます。 「フラーミィも覚えてはいないかもしれないけど、意識を持つ前にいた場所さ。知識としては知っているだろう?」 「水神様って、ウィスハートの始祖に、影をあやつる力を授けてくれた神様? 本当にいたの?」 「ええ? 何言っているんだい? 当たり前じゃないか! アイラだって、桐子に昔話を聞いているだろう?」  紅霧は呆れたようにアイラをいさめました。 「まあね。昔々、戦で傷ついたウィスハート家の女戦士が、水神様の湖に辿り着き、湖の水を飲んだ。すると体の傷も疲れも()えた。  湖の水の不思議な力に心打たれた女戦士が戦の終焉(しゅうえん)を祈っていると、湖から水神様が現れて、白と黒の鏡と共に、影を操る力を授けてくださった。  水神様は巫女となった戦士を通して此岸の様子を楽しみ、その見返りとして、水神様の巫女となった私たちの始祖は、一世代おきに白と黒の鏡、そして影を操る能力を子孫に受け継いでいる……でしょ?」
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加