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「奈落さ。アイラとフラーミィは奈落に落ちなくてよかったね」
「怖い事言わないでよ、紅霧」
「おや! 本当の事だよ。ブラックホールみたいなものだね。次元の世界の墓場さ」
「次元の世界の墓場……?」アイラはブルッと身震いしました。
「そう。そしてここは、水神様の湖の底だよ」
「ここが水神様の地なのですね……」
私は周囲をぐるりと見回しました。初めて見る景色なのに、どこか懐かしさを感じます。
「フラーミィも覚えてはいないかもしれないけど、意識を持つ前にいた場所さ。知識としては知っているだろう?」
「水神様って、ウィスハートの始祖に、影をあやつる力を授けてくれた神様? 本当にいたの?」
「ええ? 何言っているんだい? 当たり前じゃないか! アイラだって、桐子に昔話を聞いているだろう?」
紅霧は呆れたようにアイラをいさめました。
「まあね。昔々、戦で傷ついたウィスハート家の女戦士が、水神様の湖に辿り着き、湖の水を飲んだ。すると体の傷も疲れも癒えた。
湖の水の不思議な力に心打たれた女戦士が戦の終焉を祈っていると、湖から水神様が現れて、白と黒の鏡と共に、影を操る力を授けてくださった。
水神様は巫女となった戦士を通して此岸の様子を楽しみ、その見返りとして、水神様の巫女となった私たちの始祖は、一世代おきに白と黒の鏡、そして影を操る能力を子孫に受け継いでいる……でしょ?」
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