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「なんで、かい? 邪魔だからさ」
その言葉に、アイラがショックを受けたのは、明白でした。一来と稜佳が神木紫霧に記憶を盗まれ、アイラとの間になにがしかの亀裂を生じたばかりなのですから。取り戻したばかりの紅霧を失うのは、耐えがたい事なのでしょう。アイラの青い瞳が暗く翳りました。
「お言葉ですが、紅霧。二つの目よりも六っつの目があった方が、鳥を見つけやすいのでは? それに、猫の姿では、何かと不便でしょう」
「あたし一人で充分だよ」
「しかし」
「うっるさいねえ! 鳥なんか、見つけたらふんじばって連れ戻せばいいんだ。簡単なことさ」
「しかし、猫の手ではふんじばれないのでは?」
「だ、大丈夫さ! 大体、どうせ鳥はふんじばったり出来ないんだし」
紅霧はふん、とそっぽを向きましたが、三角の耳がピクピクしています。どうやら本当に手詰まりだったのでしょう。
「紅霧。言っていることがめちゃめちゃですよ。世界が失われるのなら、アイラ一人を守ったところで意味がないのではないですか?」
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