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 紅霧は唐突にジャンプすると不敬にも、ご神木を蹴って足がかりにし、私に飛び掛かりました。そして黙っていろ、とばかりに猫パンチを繰り出し、私のスーツに一撃を加えると、くるりと空中で回転して地面に着地しました。 「ごほっ」  私は咳をしつつ、胸に手を当てました。あまりにも可愛らしい黒猫の姿なので、つい油断してしまいました。思いがけず手ひどい一撃です。パンチの威力ではなく、猫の足型がスーツに付いてしまったという点において。  私はスーツの汚れを手で払いました。……落ちません。お気に入りの黒いスーツに白い汚れが引き延ばされただけでした。私は奥歯をギリッと噛みしめました。 「……次はありませんよ、紅霧」 「ウニャッ! 負け犬の遠吠えかい? フラーミィ」  紅霧は体中の毛を逆立て、背中を丸めて高くあげ、いつでも飛びかかれるよう、身構えました。 「二人とも、やめて。ようするに、逆さ鏡が『太る』前に、鳥を捕まえればいいんでしょ? 簡単な理屈じゃないの」
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