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「簡単な理屈だって? ふん! それこそ簡単に言ってくれるじゃないか」
紅霧は、はあ、とため息をつきました。
「アイラの事だから、ダメだと言っても勝手に鳥を捕まえようとするんだろうね。仕方ない。それならあたしの目の届く場所で動き回ってくれた方がまだまし、ってもんか」と、紅霧はこぼしました。「ひとまず、帰るよ。鳥はおそらく現実世界にいるんだから」
紅霧が足音もさせずに歩き出すと、進行方向にトゥラナが出現しました。紅霧はトゥラナの縁に前足をかけ、私たちを振り返りました。
「アイラ、フラーミィ。さあ、一緒に帰ろう。こっちにおいで」
「紅霧、何をするために水神様の湖にやってきたのですか?」
「現実世界で消費した精命、つまり湖の水を補充しにきたんだ。知っているだろう? 湖の水は精命そのもの。人の体を癒し、影に命を与えてくれる。……さあ、帰ろう。ここにいてはいけないよ」
紅霧の声がやけに優しく響いたのは……、気のせいでしょうか?
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