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窓辺でシャーッと紅霧が唸り声を上げました。視線の先には、神木紫霧がいます。紫霧は手に鏡を持っていました。
持ち手の部分は黒い銀のような素材で、細かい彫刻が彫られています。蛇や毒虫の克明な彫刻は、今にも魅入られてしまいそうほど精巧で美しく……まごうことなく禍々しい。
紫霧とアイラの間には、砕けたペンケースの残骸が散らばっていました。
「神木紫霧! やっぱりあなただったのね!」
「あはっ。なに、言ってるの? やったのはウィスハートさんでしょう?」
「はあ? そっちこそなに言ってるのよ」アイラは訳が分からない、という風に首を傾げました。
「消しゴムにカラーペンやペンケース、ウィスハートさんが触った物は全部、砕けちゃったって聞いたよ」
紫霧はゆがめた唇を舐め、笑っています。
「なに言って……。あれは落ちていたから拾ってあげただけ……」と言いかけて、アイラははっとして口をつぐみました。
誰かが言っていたのを聞いた……と、皆が知っている事実のように話す紫霧の口調に、嵌められた、と気が付いたのでしょう。周囲からの冷たい視線が、アイラを刺しています。
「ちょっ、ちょっと、私じゃないわよ。紫霧が逆さ鏡で……!」
「鏡、鏡ね。これのことかな?」
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