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「さっきの質問のもう一つの答えを教えるね。鏡に映すだけで壊せるのに、なぜわざわざ現実に宙に浮かべるのか?」  紫霧はにっこりと笑うと、鏡をアイラに見せつけました。鏡の中では、アイラが上下逆さまに映っています。  アイラは唇を噛みしめ、悲鳴を喉の奥に押し込めました。しかし全身が細かく震えているのは抑えられないようです。 「答えはね、宙に浮かぶと落ちる。落ちると壊れる……。この図式って、もうあなた達の頭の中に刷り込まれてるでしょ? 何も知らずに、急に砕けるより……結末が分かっている方が、ずーっと怖いでしょ? それが、答え」 「アイラっ! 鏡から出てください!」  私が叫ぶのとほぼ同時に、アイラは足をすくわれたように仰向けに倒れ、空中に寝ているような格好で静止すると、何かに引っ張られるように上昇し、教室の天井に思い切りバンッ! とぶつかりました。 音を吸収するためのちいさな穴が開いている天井の素材は、多少は緩衝材の役割をはたしてくれているようでしたが、あくまで一撃で頭を割らない程度のものです。  私は出来うる速さで、床を刷き、影の体を天井まで伸ばしました。手を差し伸べ、アイラの制服に、確かに手が触れたのです。しかし柔らかく見えていた天井は、アイラを教室の床に向かって弾き返し、私の手を振り切ってアイラを吹っ飛ばしました。
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