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 しかし持ち上がらず、「おんぶして保健室に連れて行くよ」と言って背負いました。  なんとか立ち上がったものの、足がぶるぶるとして生まれたての子ヤギのように震えています。  一来はこんな時でもおもしろい……。  私はくすりと笑みをこぼし、「さあ、はやく行きましょう」と一来を促して、廊下に出ました。黒猫はいつの間にかどこかへ姿を消していました。 「一来、私たちは保健室には行きません。このまま家に連れて帰ります」 「僕も行くよ!」 「いいえ、一来、貴方は……、アイラを忘れてしまったのでしょう? アイラを運ぶのを手伝ってくださったことに感謝しますが、自分の事を忘れてしまった貴方を見たら、アイラは悲しむでしょう。私は悲しむアイラを見たくはないのです」 「ごめん、フラーミィ……。本当に……ウィスハートさんのこと、思い出せないんだ。クラスメートだということは分かるのに、思い出が何もない。 それなのにウィスハートさんの影の君の事は覚えてる。僕の中で、ウィスハートさんとフラーミィは「別人」だからだと思う。 だからすごく……気持ちが悪いんだ。記憶の中にまっくろい欠落があるってことはわかるから」f1f15537-ad95-473c-a31b-5bc97fe8c6cbイラスト:水色奈月様
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