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「どういたしまして、稜佳」とにっこり微笑むと、稜佳が腕の中で頬を赤らめました。 (ああ、いけない。つい人間を魅了してしまうのは私の悪いクセですね) 「痛ってえ……」と、足元で一来がお尻をさする一来の声がしました。一来は後方に飛ばされ尻もちをついていたようです。 「ああ、一来、申し訳ありません。あいにく腕が二本しかなかったもので」 「だ、大丈夫」  おそらくまだかなり痛むのか、一来が顔をしかめながら笑うという器用な顔で言いました。やはり一来は面白い……。  私たちは、そろそろとゲートの中を移動して、四角い箱のそばに行き、大きな建造物を見上げました。遠方からは真っ白い箱に見えましたが、近くで見ると、箱の側面に階段があります。影もなく白いので、凹凸が見えなかったようです。 「どうしたらいいのかな?」と、稜佳が不安そうに言いました。 「まあ、ここにいても仕方ないよね」と、そして、私たちの方に手をまっすぐに伸ばし、「さあ! 行くよ!」と言うと、黒猫を従えて、ゲートから真っ白い階段に向かってジャンプしました。  アイラはお手本のように軽々と、ゲートから四角い建物に飛び移りました。 5847ad3b-bf1b-44ea-899d-bee0937688f2 イラスト:水色奈月様
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