猫の運び屋

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そういうわけで、俺はいかに猫に気づかれず猫を観察するかというスキルを磨きに磨きに磨き上げ、いつしか猫にバレずに昼寝する猫を1時間も観察できるようになった。正直それで自然な姿を撮影する技術が上がって仕事にも役立ってる気はする。まぁ、猫については正面から顔をのぞくとバレるから、相変わらず生で顔を見れないのは変わらないんだけどね。 いつかお尻や尻尾だけでなく顔もじっくり見たいなぁ、と思っていたそんなある朝。 にゃぁ。 という声を聞いて光の速さで庭を振り向き、驚いて腰を抜かしそうになった。 1匹の三毛猫が俺の顔を見ていた。 まじで!? まじ?? えっ感動! 衝撃に動けずに固まっていると、風に飛ばされたのかなんだか、撮った猫の写真が居間の窓際に散らばっていて、その猫は開いた窓から足をのばしてそのうちの1枚を柔らかそうな肉球で押さえていたことに気がついた。 猫はその写真の上にそっとバッタを置く。 俺の大切な猫写真が!!!! その三毛猫は俺をもう一度見て、にゃあ、と鳴いた。 えっえっどういうことだよ? 猫が俺を見たよ? 鳴いたよ? 三毛猫はトントンとバッタを乗せた写真をたたく。 写真は白猫の写真だった。この間会合に来てた子だ。 にゃお。 んんん? なんだ? どきどき。 「ひょっとして、この白い子にバッタを渡せってこと?」 にゃあ。 そう鳴いて猫は軽やかに庭を横切り去っていった。 猫に頼まれごとをされた。 ??? まじで? 混乱でしばらく呆然としていると、写真の白い猫がやってきて、恐る恐る、にゃおん、と鳴いた。 えっえっなんなの? 猫。白猫はこころなしかビクビクしているような。 でも俺は間違いなくこの猫以上に動揺している。猫ラッシュ。心臓、破裂しそう。 ごくりと唾を飲み込んで恐る恐る白猫の写真の上に置かれたままのバッタを差し出す。 白猫は写真と俺の顔を見比べる。 にゃん。 これは私宛? そう聞こえた気がした。 俺は急いで撮り溜めた猫写真をあさり、先程の三毛猫の写真を示す。こいつ、こいつから。 そうすると白猫は安心したように、にゃん、と鳴いてバッタを咥えて消えた。 ??? よくわからない。まあいいか。いや、とてもいい。幸せ。まさかまさかあんなに願った猫の顔を1日に2匹も拝めるなんて! 尊い。俺、今絶対ゲスい顔してる。あれ? でも俺ラック使い果たして死んじゃったりする?
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