猫の運び屋

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俺のところに来た三毛猫はかなり賢いんだと思う。 それともこれが猫の標準クオリティなのだろうか。 時には他の猫を連れてきて庭猫フォルダから写真を探し出し、そこに他の猫が持ってきた贈り物をのせる仲介のようなこともやっていた。 いつしか俺の家の今にはちょくちょく複数の猫が出入りするようになった。尊い。だが俺のジレンマは募る一方である。猫の写真を撮りたい。 正面から猫の写真を! 俺に自由を! FREEDOM! 俺の庭猫フォルダの中には、いまだ遠隔操作以外で猫の正面を捉えた写真はない。遠隔操作では猫の集会をジャストなタイミングで隠し撮りすることはできても、ジャストな距離感を詰めることはできないのだ。帯に短し襷に流し。これまではそれで十分満足してた。だってこんなに近くに動く猫を見ることはなかったんだもの。距離感だってそんなものだった。 でも今は! 目の前に、この至近距離に猫が! 猫の写真が撮りたい、こんなに近くにいるのに撮れない。ひどい焦らしプレイ。 そのころにはあの三毛猫は人間の言葉が理解できるんじゃないか、そんな気がしてきた。 恐らくは俺の妄想にすぎなくて、気のせいの勘違いだろう。 けれども俺の精神は焦らされすぎて我慢の限界を迎えていてどうしようもなくなっていた。ラリってた。 だから俺は正攻法でアタックすることにした。 正攻法、それは土下座である。
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