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 カーテンの隙間からは、既に強い光が差し込んでた。  のそのそと布団から這い出た私は、枕元の時計を見て飛び上がった。だって、就業の開始時間まで、あと十五分に迫っていたんですもの。  その年 大学の福祉科へ進学していた私は、夏休みの間、介護老人保健施設でアルバイトをしていたの。バイト先までは、自転車だと三十分、バスを使っても二十分はかかる。 「遅刻決定かぁ……」  傍らに置いてあったスマホから急いで連絡を入れ、最低限の身支度だけ整えてパンを頬張りながら、家を飛び出したわ。  少しでも時間を短縮したかったから、バスを使うことにした。  バス停は、車道の反対側にある。横断歩道の前で、信号が青に変わるのを待つのが、もどかしい。 「早く向こう側に……」  足踏みしながら呟いた、まさにその時だったわ。目の前の景色がほんの僅かだけ揺れたような気がしたのは――
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