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 気が付いた時には、見慣れない部屋の中にいたの。  閉め切られていたカーテンをそっと開けてみて、すごく驚いたわ。だって、窓から見える、その美しい風景は――パンフレットに載っていたのと全く同じ、外国のものだったんだから! 「まあっ、なんて素晴らしいのっ♪ 」  私、とっても感動したの。  行きたいとは思っても なかなか機会に恵まれなかった海外へ、いとも簡単に、旅費もかけず飛んで来れたんですもの。  これまでより移動に要した時間が長く感じられたのは、随分距離があったからかしら。    そりゃあ海外ですものね。横断歩道の時やバイト先の時とは違ってても当たり前。  むしろ、距離の割には短すぎる時間だったと言えるのかもしれない。  そういえば、これまでと違い、口に出さずとも心の中で思っただけで実行されたのよね。感度も高くなってきているみたい……  テーブルの上には、一冊の雑誌が広げられていた。  外国の文字で、何て書いてあるかは全然読み取れなかったけれど、添えられた写真は自国のものだった。しかも、私が住んでいる町の風景よ。いくつかのスポットが魅力的に紹介されていたの。   ――きっとこの部屋の住人も、今頃は私の住む町で、素敵に旅行気分を満喫していることでしょう……  そう思ったわ。
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