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夫の日常
最近、妻の朝番がグンッと減った。
俺が起きても、妻がまだ自宅にいることが多くなった。
抜け殻になったタオルケットを抱き締めなくとも、すぐそこには妻がいる。抱き締めることができる。
なんて幸せな朝だろうか。
その日、妻はダイニングでグレープフルーツジュースを飲んでいた。俺が毎朝飲んでるグレープフルーツジュースだ。
「あれ?今日はカフェオレじゃないの?」
「うん、飲んでみたらハマっちゃって。おいしいね」
「だろ~!?朝からサッパリするっていうかさぁ、俺昔から好きなんだよね~!」
妻はニコニコしながら、朝から俺の話に付き合ってくれている。それだけで、今日も仕事が頑張れそうだ。
「じゃ!俺が今日はカフェオレにしちゃおっかな!?」
「…なんか怖いから作ってあげるよ」
「ちょ、コップに注ぐだけじゃね!?さすがにできるし!!」
こんな他愛もない話が幸せで仕方がない。
夫婦、って全身に感じる。
―――
こんなに幸せなのに、俺にはただひとつ満たされないものがあった。
最近、めっきりご無沙汰なのだ。
数ヶ月前はさ?時間が合えば…ってそんな盛ってないけど!まぁ、休日やらなんやらでそれなりに営みがあったわけで。
それなのに。
今はどんなにいい雰囲気になろうとも、軽いキスだけではぐらかされてしまう。
身体も触らせてくれようとしない。
…俺、なんかしたっけ?
これが俗に言う、セックスレスというヤツなのか?
仲が悪い訳ではない。もちろん俺は妻を愛しているし、妻からも愛情を感じる…と思ってるよ、俺は!!
メンバーに愚痴ろうもんなら、
『ハイハイ惚気惚気』
と相手にしてくれないだろう。
それに、夜の生活を赤裸々に話すなんて、高校生でもあるまいし。
こうして、セックスレスは社会問題になっていくのか…と肌で感じた。
俺はこの数ヶ月、1人悶々と過ごしていた。
性的な意味ではなくてね!?
顔を合わせる時間が増えたのに、前のように触れ合えないこの状況が、もどかしくてたまらないんだ。
さくら。
君は今何を考え、どんな思いで俺と過ごしているんだ?
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