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江貴妃は、その間に自分こそが皇子を産み皇后の位についてみせると息巻いているようだが、今のところ子には恵まれていない。
皇太后にしてみれば、淑妃が無理ならばせめてライバルの江貴妃には皇子を産ませたくない。
その前に自分の息のかかった妃嬪に皇子を産ませようと考えているらしかった。
妃選びなどといっても色気もなにもない。
重要視されるのは、恐らく健康で多産そうな体を持っていることと、おとなしく従順で皇太后の意のままになりそうな娘かどうかということだろう。
だったら自分が出ていって選ぶ必要などないだろうと思うのだが、そうもいかないらしい。
飛鷹は、なかばうんざりしながら会場となっている仁寿宮に行った。
そこではすでに皇太后が待ちかねていた。
「随分遅かったのですね。皇上。どちらかへお出かけでしたか?」
飛鷹がお忍びで城下に出ていたことも、母はすっかりお見通しらしい。
「いえ、ちょっと支度に手間取りまして……」
飛鷹は、曖昧に言葉を濁して中央の玉座についた。
秀女たちとの間には、御簾が下ろされあちらからは、こっちの顔が見えないようになっている。
やがて秀女選びが始まった。
最初に入ってきたのは、痩せた小柄な娘だった。
「式部省の副長官、索氏の娘、玉琳、十七歳」と太監が名を読み上げる。
前に進み出てお辞儀をするが早いか、皇太后が手にした扇をすっと閉じる。
御前太監が心得たように、
「索 玉琳に花を賜る」
と高らかに告げる。
索氏の娘はいたたまれない様子で、うつむきがちに渡された花をとり下がっていった。
選ばれた娘には、宮女の印である銀の札を賜る。
花を賜るというのは、札を貰えない。つまり、落選したという意味なのだった。
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