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4.誓いの首飾り
「俺と一緒に逃げよう、藍珠」
皇都行きの話を聞いた涼雲はそう言った。
「言いなりになることない。どこか遠くへ逃げてそこで結婚しよう」
一瞬のためらいもなくそう言ってくれた彼の気持ちが、藍珠は嬉しかった。
けれど、それだけにそれは出来ないと思った。
こんなに優しい涼雲を巻き込みたくない。
逞しい体格の美丈夫で、馬術にも武芸にも秀でた涼雲は、将来部族を担っていく一人として皆から期待を寄せられていた。
そんな彼の将来が、自分と一緒に逃げたりしたら滅茶苦茶になってしまう。
一族の首長の命令に背いて出奔した逃亡者となったら、草原ではどこの集落にも受け入れて貰えない。
それどころか下手をしたら裏切り者として追われる身となる。
愛する彼をそんな目に遭わせることは出来ない。
「出来ないわ。涼雲。私は言われた通り皇都へ行く」
「どうしてだ!? 皇宮に上がったらそう簡単には出られない。翠蓮の侍女として一生を独りで過ごすつもりか?」
「分からないけど、それでもいいと思ってる」
「なぜだ。俺と一緒になるって約束しただろう!」
涼雲は藍珠の両肩をつかんで引き寄せた。
そのまま彼にすがりついて、
「連れていって。どこまでも一緒に」
と泣きじゃくりたい気持ちを懸命に抑えて、彼を見上げる。
「だって私たちが逃げたらあなたのご両親はどうなるの? きっと無事ではすまないわ」
涼雲は、はっと息をのんだ。
「あなたのお父さまは有力者だけど、それでも息子が首長の命令に逆らって、その娘を連れて逃げたとなれば、他の者たちの手前、そのままにすることは出来ないはずよ。お父さまとお母さまは、皆が冷たいこの集落のなかで、ずっと私に優しくしてくれたわ。母が亡くなったときも、ご両親がいなければきっとお墓をつくることも出来なかった。本当に感謝してる。そのお二人に迷惑をかけることなんて私には出来ない」
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