23人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
5.皇都へ
「こんなのってないわ。聞いていた話と全然ちがう!」
皇都に着くなり翠蓮は、母の玲氏に訴えた。
皇帝の妃になるといわれて、皇都へやってきた翠蓮だったがそこで待っていたのは盛大な妃選びの選考会だったのだ。
皇都の大路は、鴻国全土と周辺の属国からあがってきた妃候補の令嬢たちの馬車で溢れんばかりだった。
現在の皇帝、玉鷹帝にはすでに複数の妃がいたが、その誰もが男児に恵まれていなかった。
そこで、後継ぎ問題を心配した皇太后の提案で、後宮に新たな妃を入れることになったのだ。
もちろん、選考会とはいっても本当にふるいにかけられるのは、下位の宮女となる下級貴族の娘や、弱小の部族の娘たちで、翠蓮のような有力部族の娘に限って、選考に落とされるようなことはまずない。
入宮するのは内定しているうえでの形式のようなものなのだが、それでも故郷で並ぶ者もない唯一の姫として大切に崇め、育てられてきた翠蓮にとって、他の娘たちと並んで選考会に出て、品定めをされるというのは我慢の出来ないことのようだった。
最初のコメントを投稿しよう!