24人が本棚に入れています
本棚に追加
集落にいた頃は、同年代の友達などいなかった藍珠は嬉しくなったが、それと同時に咲梅もきっと、自分が「凶星」と呼ばれていることを知ったら、不吉だと離れていってしまうのだろうと悲しくなった。
「あなたは黄族の集落から来たんでしょ? あのお嬢さまはいつもあんなに我が儘なの?」
「我が儘というか……翠蓮さまは、一族皆の幸運の星でとても大切に育てられてきたから」
藍珠は遠慮がちに言った。
「幸運の星だかなんだか知らないけど、私にとったらとんだ疫病神になりそうだわ。聞いた? 『皇都では皇帝陛下が私のことを首を長くして待っていらっしゃる』『最愛の妃としてお迎え下さる』ですって。何様のおつもりなのかしら!」
「しいっ。お嬢さまの母君の玲氏さまは厳しいお方よ。そんなことを言ってもし聞かれたら大変なことになるわ」
「そうなの? 確かにキツそうな顔してたわよね。あのお母さまも」
咲梅は笑って首をすくめた。
藍珠から、翠蓮は甘いものに目がないと聞いた咲梅は、
「だったら、外の出店で何か買ってきましょうよ」
と提案した。
お妃選びを控えた、皇都には多くの人が集まっていてちょっとしたお祭り騒ぎだった。
食べ物や衣、雑貨や宝飾品を扱う出店もたくさん出ているらしい。
「そのへんにあるお菓子や点心ではお嬢さまは見慣れてるでしょう? 出店でしか売っていないような珍しいものを買っていけば、ご機嫌がなおるかも」
確かに翠蓮は珍しいもの、目新しいものが大好きだ。
それなら確かに、少しは気が紛れるかもしれない。
藍珠は早速、咲梅と連れ立って街へと繰り出した。
最初のコメントを投稿しよう!