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3.はじめまして 君の夫です
(古いとは聞いていたけれど、これじゃほとんどお化け屋敷じゃないの)
雫は途方に暮れて、門の外から屋敷を眺めた。
黒い格子戸のついた屋根付きの門は立派だったが、そこに門の脇の巨大な柳の葉が枝垂れかかっているのがなんともおどろおどろしい。
一緒に屋敷を見る約束をした榊氏はまだ来ていない。
(もうこのまま、帰っちゃおうかな)
という思いが頭を掠めたが、それであの物腰が柔らかいわりに妙に押しの強かった榊氏が納得してくれるとも思えない。
雫はなにげなく格子戸に手をかけてみた。
すると戸がカラカラと開いた。
(え、何? 鍵かけてないの?)
不用心といえば不用心だが、こんなお化け屋敷みたいな家に好き好んで入ろうとする泥棒もいないか。
(そんな泥棒にも避けられそうな不気味な邸を譲られようとしている私っていったい……)
せめて祖父の存命中に訪ねることが出来れば、この屋敷の印象もずいぶんと違ったものになっていたと思うのに。
そんなことを思いながら、門をくぐり中へ入る。
門から玄関までは、白い玉砂利がしきつめられ、その中に飛び石が風情ありげに配置されていた。
造りだけみたら、どこかの高級旅館のように立派なのにこの妙に禍々しい雰囲気は何なんだろうか……。
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