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4.狐に嫁入り?
目が覚めると布団の中だった。
(なんだあ…夢か。良かった……)
と思ったのも束の間。
(ん? 布団!?)
雫はがばっと起き上がった。
雫が寝かされていたそこは、一人暮らしを始める時に買ったベッドの上ではなく、見覚えのない和室に敷かれた布団の上だった。
掛布団は妙に光沢のある赤で、そこに金色で描かれた花や鳥の模様が飛んでいる。
「なに、ここ……?」
まだぼんやりしている頭で記憶を辿る。
(確か私、お祖父ちゃんの遺産だっていうお屋敷を見に来て……。それからどうしたんだっけ?)
その時、すうっと襖が開いて人が入ってきた。
「あらっ、目が覚めたの?」
そう言ったのは、腰くらいまでの長さの髪を垂らした着物姿の女の人だった。
黒目がちの目をしたとてもきれいな女性だったけれど、彼女の姿を見た雫は固まった。
(髪の、色が……)
「大丈夫? 気分は悪くない? まったく柊が驚かすから……」
そう言う女性の髪は、芽吹き始めた木々の若芽のような、淡く瑞々しい緑色だった。
カラーリングとかそういうのではないのは明らかだった。
木々の緑の色をそのまま切り取ったような透明感のある緑色。
そんな髪の人間を雫は今まで見たことがなかった。
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