カエノメレスの遺言

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二十年以上前になる大学受験、 なんの目標もないけれど 身内の殆どが法学部だから 法学部と書いて、学校に提出、 「あと一息頑張って  東大を狙えないのか?」 担任に言われたけれど 「頑張るとかダルい・・・」 そう言って自宅から通える 大学を希望した。 「ダルいなんて、贅沢やなあ」 担任の横で勉強してた翔ちゃんが 笑いながら私に言った。 「翔ちゃんは無限に賢いけど  鈴子は無限にアホやねん。  大学まで行くだけでも  苦痛でしようがない。  拒否したら親に放り出されて  働いて生きんとアカンやん?  とにかくなるべく働かんと  暮らしていたいねん」 「ホンマにお前はアホやなあ」 翔ちゃんは呆れたような・・・ 寂しいような・・・ なんだか微妙な笑顔。 「ほじゃ、先生、鈴子、帰る」 「寄り道バッカリすんなよ」 担任がポンポンと私の頭を 書類で叩くと 「そろそろ僕も・・・  バイトへ行きます。  先生、今日もありがとう  ございました」 「おー、気をつけてな、  風邪ひくなよ」 弟を見るような優しい目で 担任は翔ちゃんを見送った。
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