カエノメレスの遺言

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遊び仲間と難波あたりで ゲーセンに寄った。 朝、母親の財布からクスネた 五千円ほどを、ものの一時間で 消してしまうと 「しゃあないなあ」 てな感じで帰宅。 飼い犬相手にしながら 母親の”お小言“を右から左、 (せや、東京で下宿するほうが  家族の面倒はなくなるなあ) 呑気なことを考えながら夕食。 「勉強するわ」 と、二階へ上がったものの、 勉強するはずもなく 携帯電話を弄っていると 翔ちゃんから電話が・・・。 「どした?」 「借りれるんなら大学の赤本、  貸して貰えるかなあ、なるべく  早く返すから」 「別にいいよ。取りに来る?」 電話を切ってから 一時間ほどして 「え?家の人の車とか、  バスとかじゃないの?!」 冬なのに汗をダクダクにして 少し山に入った私の家に 翔ちゃんは自転車でやって来た。 「アカンアカン!汗を拭かないと  風邪をひいてしまうわ」 母親がタオルを渡すと 「ありがとうございます」 翔ちゃんは玄関で汗を拭った。 「ケーキ、食べる?」 なんとはなしに誘うと 「御言葉に甘えて」 なんて、ちゃんとしたコトを言うて リビングに入ってきた。 私が受験予定大学の赤本やら 用意していると 「鈴子と同じ大学を受けるんか?」 父親が翔ちゃんに尋ねた。 この年、父親はアミダくじに負けて 私の学校の父兄役員をしていたから 塾も行かずにトップをヒタハシル 翔ちゃんのことはよく知っていた。 「てっきり(絶対に)  東大行くと思ってたよ」 父親の言葉に、 翔ちゃんは隣の部屋の グランドピアノを横目に 「ウチ、貧乏やから・・・」 顔を赤くしてポソっと言った。  
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