13人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
6年目夏
今年の夏は短かった気がする。
物足りない感じもするが俺は暑いのが嫌いだ。
嫌な季節が流れ、秋が待ち遠しいと思うと子供のようにわくわくしてしまう。
いけないな…俺も26なのに。
「楽しい?クロ。」
ここ最近深夜の散歩を気に入ってる。
雑草だらけで錆び付いた遊具の捨てられた侘しい公園。子供の声を聞いたこともない。
前に足を運んだことがあって感慨深い。
日中なんて無駄に暑いだけだ。
日が、朝が始まる前の、生まれる前の時間にひっそり気晴らしするから乙なのだ。
「手を汚さないようにしろよー。」
はしゃぐクロに微笑みかける。
ちょっと嫌がられたが紅いリボンがよく似合う。幾つになってもクロは小さくて可愛いなぁ…。
街灯がチリチリ切れかかる。
「…今日は友達来るかな?」
家に閉じ込めるのは可哀想だ。
こうやって外を知ることも大切だよな?
奥から現れる影が街灯に仄か照らされる。
クロが足元にすがりついてくる。
何度も頭を撫でてやった。
有意義な散歩の時間だった。
最初のコメントを投稿しよう!