5年目春

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5年目春

その日は喫茶店で珈琲を飲んでいた。 クロの…自殺未遂。 それを浅実にも打ち明けてしまった。 今や浅実は俺にとって欠かせない親友だ。 一通り話を聞いた浅実は右腕の包帯をさすってポツリ、呟いた。 「辛かったね…お互い。」 「俺なんかどうでもいい…会話でコミュニケーション取れないクロが一番苦しんでるんだ。ずっと傍に居るのに…気づけなかった自分が歯痒い、憎いよ…。」 「きっとクロは一人で家にいる時間が長いから深く考え過ぎちゃうんだよ。ウチもそんな頃あったし…。あっそうだ!」 いつになく浅実が顔色を輝かせた。 それを微笑ましそうに眺めるマスターとの間に俺は困惑して顔を上げてみせた。 「オススメの内職教えてあげるよ。稼ぎはそんなにないけど…いい上司知ってるんだ。ウチも病んでた頃、経験あるんだ。クロもきっと上手に出来る。それで労働ってやつを知ってもらったらどうかな?」 「おお…いい考えだな。」 昔は考えたこともなかった…友人に助けられる自分ってやつを。だけどこの時手を差し伸べてくれた浅実に本当に感謝してる。
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