6年目秋

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6年目秋

待ち合わせの喫茶店。 今日は、少し緊張してる。 珈琲の波が微かに揺れていた。 言わなくちゃ、いけない…俺が言わないと。 それは誰でもない…クロのためだ。 俺が守ってやらないと。 カランカラン 「やっはろー♪」 ご機嫌な様子の浅実が入店する。 いつもならマスター共々笑顔で迎え入れるが今日は俺だけ口を横に引き結ぶ。 「なに?こわい顔してるー。」 こっちは真剣と言うのにまだ笑うか。 いつもの席に着くや否や、注文も遮り単刀直入に聞いた。 「…お前、クロを苛めてるらしいな。」 「え?」 親しいと思ってたのに、仲良しだと安心してたのに…!仕事から帰ってきて、俺の知らない痣を見て激しい怒りを感じて呼び出したのだ。浅実の顔面が蒼白する。 「あ、あれは…その、お遊びの延長だよ!決して怪我させようとかそんなつもりじゃ…」 ガタン! 「クロは…クロは!話せないんだぞ!無抵抗で純粋な少年をいたぶって楽しいか!説明出来ないあの子を傷つけるのが幸せか!!」 「お、お客さまたち…」 マスターが制するのも聞かず胸ぐらを掴みあげる。長い髪を細かく揺らし、カタカタ震える浅実。恐怖で動かない瞳には涙がたっぷり溜まってた。 「ごめん…ごめんなさい。ちょっと嫉妬しただけだよ。君とずっと仲良くしてるから…意地悪したくなったんだ。」 「俺は仏じゃない…だから三度も許さんぞ。次に俺の目の届かないところでひどいことしたら…縁を切る。」 「そ、それだけは許して!ごめんなさい、ごめんなさい…!何でもするから!」 こいつもしかして…俺のことが好きなのか? それなら慣れてる。操るのは容易い。 怒りが萎え、胸を掴む手を下ろした。 「クロは…優しい子だ。繊細なんだ。…いいな?二度目はないぞ?」 「分かった…分かった、言う通りにする。」 泣き笑いして何度も頷く浅実。 …クロのことを守れたと思うと胸がスッとした。
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