6年目冬

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6年目冬

「大丈夫、ちゃんとなおしてやるからな。」 不安そうに俺を見つめるクロに優しい声をかける。買ってやったばかりのシャツが破けてしまったのだ。 学生時代はおろか、社会人になってからもロクに裁縫なんていじったことない。 それでもクロの申し訳なさそうな表情を見ていたらなんとか力になってやりたくて、深夜のコンビニでソーイングセットなるものを買ってきた。手の平サイズで意外と扱いやすい。 慎重に針に糸を通すだけでも苦戦した。 だがこれで終わりではない。 意識を一点に集中させ、ゆっくりと切れ目に針を通す。それを見守っていたクロが悲鳴を上げたようなジェスチャーを取る。 「平気平気、綺麗にしてやるから見てな。」 そう言えば昔、授業で刺繍をした時は集中力が保てなくてぐちゃぐちゃに縫ったっけ…。 だけど今はクロの一張羅の命懸かってる。 一晩中縫合に取り組んだんだが…結局縫い目はぐちゃぐちゃになってしまった。 これは俺も悪い。今度新しいシャツを買ってやろうと思う。
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