13人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
7年目夏
いつもの席でマスターとお喋りしながら、苦い珈琲を啜る。
「…なんてことになったんだよw」
「それはそれは、大変でしたなぁ。」
微笑に揺れる銀の髭。話を聞きながらもグラスを磨くのを怠らないマスターの鑑。
あー俺、結構マスター好きかも。恋愛感情は微塵もないけど親より親って感じしてる。
何もかも素直に話せる相手はマスターかクロしかいない。そう、今は二人だけ。
「………。」
隣の席をチラリと見る。
もう長いこと浅実とは連絡取ってない。
俺やクロに、遠慮してるんだろう。
友に会えない寂しさはあるが、あれは仕方ない。クロを虐めた罪はそれだけ重いんだ。
頭では分かってるはずなのに、どうしてもやっぱり寂しい…。甘い感情を流すために不味い珈琲を嚥下してる。
カランコロン…
「いらっしゃいませ。」
マスターがニコやかに声を掛ける。
興味半分で俺も僅か、振り返ってみた。
「…!」
「アの…オミセ、開いてマスか?」
肩幅がドアの横幅よりでかい男。
身長はゆうに2mあるだろうか。
パッと見ただけで分かる、異国の青年。
タッパはあるくせにすごくモジモジして喫茶店を覗いてる。マスターが穏やかに返事した。
「お好きな席に掛けてくださいな。」
「ヤァ…ドも。」
「…ども。」
独特なパーソナルスペース、俺の隣に座るか。
最初は正直不安を覚えたけど…彼は俺にとってかけがえない友人の一人となった。
最初のコメントを投稿しよう!