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7年目秋
大男は「ヤナギ」と名乗った。
金髪碧眼に合わない。和風すぎると指摘すると「自称」らしい。中々変わった奴だった。
職業も変わってる。「旅する写真家」なんてロマンチスト。
その青年を言葉で表現するなら…「優しい巨人」。そんな感じ。穏やかな奴で、仕事も似た感じ、上司も似た感じですぐ意気投合した。今までそんな仲良くなる奴なんてポンポン出来たことないのに…不思議な感覚だった。実際人生で友と呼べたのは浅実とこいつくらい。
不味い酒を飲み交わし、趣味について朝まで語り合い、どんどん仲良くなってった。
ヤナギは純粋そのものだった。
季節を跨いだ頃にクロにも紹介してやった。
「………。」
しかし人見知りのクロは中々なつかない。
警戒する猫のようで可愛いが、ヤナギと宅飲みとかで交流を深めたいから意地でも会わせて心を開かせてやった。なんだかんだその優しさを受け入れたようでクロも大人しくなった。
「ブラザー」。ヤナギは俺をそう呼んだが本当に兄弟のようだ。ヤナギの太鼓のように低く響く声は俺の苛立ちを紛らわせてくれる。
こんな友達が出来るなんて考えたことなかった。
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