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8年目夏
こうして見るとやはりヤナギは優しい男だ。
美しいクロに魅了され執拗に被写体になってくれと迫るもんで若干鬱陶しがられているようにも見えるが、こうしてクロが熱を持つと仕事に出掛ける俺の代わりに面倒見てくれる。
「すまんな、いつも。」
小声で玄関に向かうと眠ったばかりのクロを指し、静かに人差し指を唇に当てた。
「ダイジョブ、スベテ、ボクに任せテ。」
「俺が傍に居ないと不安がるだろうから優しくしてやってくれよ?」
更に声を落として耳打ちすると大男は無邪気な笑顔で何度も頷く。
「クロ、cute!タクサン愛情、コめる!」
「ははっ、ほどほどにな。」
行ってきますブラザー、と挨拶を交わして糞みたいな仕事へ向かう。その夜、良い知らせを持って返った。
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