8年目秋

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8年目秋

「「かんぱーい♪」」 冷えたジョッキグラスがカチン!と良い音を立てる。並々注がれた黄色のアルコールがシュワシュワ泡立ち、消えないうちに流し込む。普段は不味い酒だが喜びが勝り、今日は美味しい気がする。いい気分だなぁ。 パーティーのメンバーは俺、クロ、ヤナギの三人だ。いじらしいよな、二人して俺の「課長就任三ヶ月記念」をお祝いしてくれてたんだ。豪華な食事にちょっと照れくさいケーキを見た時はびっくりした。 「ほらクロ、これ美味いぞ。」 俺のお気に入りを出来たてのうちに注ぐ。 ちゃんと飲んでくれるクロも今はオトナの仲間入り。それでもいい子だ。全員に笑みが絶えない。 飲めや歌えや、オトナがこれを楽しむ理由が分かる、だって楽しいんだもんこれ! ホロ酔い気分でヤナギと肩を組む。 すると付けっぱなしのテレビから不穏なニュースが流れた。ニュースキャスターの険しい顔が目についた。 「ここで、臨時ニュースです。今日午前未明、切り裂き事件がありました。容疑者は体格の大きめの男で黒いフードを深く被っており…」 「大事件だなぁ~?大柄ってさぁ、まさかヤナギのことじゃないよな~~?」 「フッ。」 意味深に笑ったヤナギは一瞬恐ろしい顔をした。酔いが覚めるかと思うほど。しかし瞬きをした次の瞬間いつもの緩い顔に戻ってテレビを消した。 「ボクら、ズッと家にいマシた♪」 「…そ、そぉだよなぁ、いやぁ危ない世の中だなぁ~~。」 見間違いだ、見間違いだったんだあれは。 脳裏に焼き付いた非情なその顔を忘れようとその日はいっぱい飲んで明かした。
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