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9年目秋
俺には一生、クロのトラウマなんて理解できない。あれだけ自殺願望の強い子だ。
それだけ苦しんだ過去があるのだろう。
それを無理やり「おかしいことだ」と頭ごなしに叱って矯正するのは心のストレスなんだろう。
なるべく二人、いや三人で愛情を与えることにした。クロは究極の寂しがりさんだ。それを欠点に入れられないくらい美しい青年だ。
あちこち出掛けて、人と会って、たまに家でゆっくり過ごす。そんな簡単な方法でクロはとても大人しくなった。当たり前のことが不足していたのかも知れない。
昔のように、昔のままで可愛いクロ。
多分、いや絶対世界で一番美しい。
親バカではなく本心からそう思う。
眠るクロの髪を撫でて額に短くキスした。
こういう親っぽい行動、少し照れくさいな。
心が暖かくていい心地だけどさ。
コンコン…
ささやかに扉をノックする音。ヤナギかな、と思った通りヤナギがこっそり顔を覗かせた。
「Hey、遊びにキマした。」
「うん、それじゃ向こうで遊ぼうか。」
最後にクロの髪を撫でてやった。
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