9年目冬

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9年目冬

ご近所付き合いの一環、回覧板が回って来た。気の優しいおばちゃんからそれを受け取って玄関を締め、これ見よがしに綴じられたチラシを観察した。 『不審者の目撃が多発してます。夜道の独り歩きなどには十分ご注意ください。』 「はははっ」 笑っちゃうよな、こんなもん。 だって俺らにはなんの関係もない。 被害もない。どこかの誰かの被害妄想に過ぎないんだから。こんな警告今まで何度も見たが一度も焦ったことはない。自然に消えるものさ。でもまあ、そのままにしておこう。 誰だって話のタネを探してるんだ。 回覧板を玄関に置く。 今書いてる暇はない。 「ごめんごめん、お待たせクロ。」 「haha、遅いデスよ。」 「ごめんってばぁ。」 せっかく休日に三人で寛いでるんだもんな、クロを放置したら可哀想だ。 「さて、続きしようか。」 変なチラシのことなんてすっかり忘れて、その日は有意義に楽しんだ。
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