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10年目春
「か、課長…っ!」
「ん?」
今日も一日働いた、帰りに喫茶店に寄ろうかなんて考えていたら社長令嬢に呼び止められた。クロほどではないが黒髪が美しく、愛らしい女性だ。なんの苦労も知らないピュアな娘が頬を紅くしてまごついてる。
振り返って、笑顔を返した。
「なんだい?」
「あの、実は私…!ずっと課長のことが好きで…!もし、もし嫌じゃなければ今度お食事でもどうですか?」
「……。」
なんて素直な娘だ。
屈託ない、嘘偽りない言葉。
俺の将来を安泰してくれる存在からの告白なんて夢のようだ。断る理由がどこにもない。
「ええ、僕で良ければ、是非。」
名前も覚えてない令嬢はますます頬を熱くした。そっと添えた手の平から熱が伝わるんだ。
ヤバい…これからの人生勝ち組でしかない。
結婚して、子供が出来たら働く必要もなくなるのでは?
あまりの興奮に勢いで令嬢にキスをしてしまった。彼女は一切の抵抗もなく乱れてくれたが…その影で俺らを監視する存在なんて知るよしもなかった。
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