しあわせ

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 変な夢を見た。  いや、いい夢か。  マキが僕に「愛してる」とか言ってくれる、そんな夢。    いや、夢じゃないな?  だって、隣にマキが寝てるし。  すやすやと寝息を立てるマキ。  意外とまつげが長い。それに、いつもと違って寝顔は子供っぽい。 「マキ、起きて。学校遅れるよ?」  僕はマキを揺さぶり、声をかける。  本当はもう少し寝顔を堪能したかったけども。 「ぅぅ……せんぱ……」  マキはうめき声を漏らすと、おもむろに僕を抱きしめた。 「ふぇ?!ちょ、マキ?!」  驚いて声をあげるが、マキは全く起きない。  てか、ちから強っ!苦しいってば!マキ近いし!めっちゃマキの匂いするし!  心の中で悲鳴を上げ続けるが、マキの力は緩まない。  暴れ疲れ、あきらめかけたとき、マキの目がぱっちり開いた。 「……おはようございます……?」 「……おはよ」  キョトンとした顔のマキに挨拶を返し、僕は力を緩めてくれたマキの腕から逃げる。 「なんで先輩が……夢……?」  ぼんやりとした表情でマキが呟く。  どうやら朝は弱い方のようだ。 「昨日泊ったじゃん。ほら、制服着て、学校行くよ?」 「泊った……?制服……学校……」  ?マークでいっぱいのマキの顔を見ていると無性に意地悪したくなる。  僕はマキの机からマッキーを取り出し、マキの前に座る。  蓋を外し、マキの顔に向け…… 「わっ、ちょ、え?!」  マキがにやりと笑って、僕の手首をつかんだ。 「起きてますよ、先輩。何しようとしてたんですか?」 「ううっ、ちょっといたずらを……。でもちゃんと水性だから……」  くそ、起きてたとは……。  完全に騙された……。 「じゃあ、俺もいたずら」  マキはそういうと、僕の口をふさいだ。 「むっ……んんっ、っはぁ……まきまって、まだ朝、だってばぁ……」  マキの舌が僕の口内を這う感覚にぞくぞくとしながらも、僕は学校に遅刻してしまうことを危惧して訴えた。  しかしマキは止まらない。  スイッチが入ったマキを止めれる術は僕にはない。 「はいはい、そこまで。仲がいいのはいいけれど、学校には遅れちゃダメ」  戸口の方から、声がした。  その一言でマキはゆっくりと唇を離した。  自由になった頭を動かし、後ろを見ると、奏さんが立っていた。  マキは平然とベッドから降りると、着替えを始めた。    あぁ、最悪。恥ずかしい……。  絶対見られた、聞かれた。もう……消えたい……。  僕は羞恥に悶えながら、学校に行く準備をするのだった。
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