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「ふっふっふ……よく来たわね……。コレやりましょ!強制参加でーす」
そんな声と共に、クラスメートの子が(名前覚えてない)お菓子の箱を見せてくる。
「パッキー?それがどうかしたの?」
それは僕もよく食べる、パッキーという棒状のお菓子だった。
細長いクッキーにチョコレートがかかってるというもので、甘党の僕は一週間に一度くらいの頻度で食べている。
「え、もしかして、神城くん『パッキーゲーム』知らないの?」
パッキーゲーム?
「うん、初めて聞いた」
クラスメートは僕がそういうと、あちゃーという顔をした。
隣にいた悠希が、教えてくれる。
「パッキーゲームっていうのは、二人でパッキーを両端から食べて、先に離した方が負け、っていうゲーム。男女でやるゲームじゃないよな……」
そういって悠希は苦笑する。
それって、どっちもが離さなかったら……キス、するよね?
そんな危険なゲームが存在したとは……。
「ごめん、僕はちょっと……」
逃げようと後ずさった僕は背中を何かにぶつけた。
壁なんてないよな?と不審に思い小半後ろを振り返ると、マキが立っていた。
「うわぁぁっ!ままま、マキ?!なんで、ここに……」
驚きのあまりかみまくりながらも僕が聞くとマキは平然と答えた。
「いつものところで待ってたんですけど、先輩遅かったんで迎えに来ました」
いつものところというのは中庭のことだろう。
お昼休みは毎日中庭で一緒に食べているから。
「ああ、そっか。ごめん……」
僕が謝るとマキは少しだけ微笑んだ。
「別に大丈夫ですよ。何してたんですか?」
僕が返答に詰まっていると、誘ってきた張本人が、言った。
「えーと、まきくん?君もやらない?パッキーゲーム」
え?
いやいやいや、まさか、マキがやるわけ……
「いいですよ」
「ないぃぃぃぃぃぃぃいぃぃい?!」
奇声を上げる僕を気にせず、マキは続ける。
「一本下さい」
「えちょ、マキ?!やるの?!」
マキはそれに答えず、パッキーを一本受け取ると言った。
「先輩、甘いもの好きですよね。チョコのほうから食べていいですよ」
マキはパッキーを銜え、チョコのかかった美味しそうな方を僕に向けてくる。
え、銜えろと?
皆の前で?
周りの人たちは、悠希さえも、僕を期待に満ちたまなざしで見てくる。
ああもう!やりゃあいいんだろ!
僕はマキの銜えるパッキーを銜える。
え、パッキーってこんなに短いっけ……?まだ食べてないのに、すごく近い!
進んですらいないのに、早くも僕の心臓はバクバクいっていた。
お互いに少しずつ食べ進めていく。
ああ、あと二口……無理……!
僕が進めずにいると、マキがさくりと、また一口食べた。
どちらかがあと一口食べれば、合わさる唇の距離。
マキが動こうとする気配を感じ、僕はつい、口を離してしまった。
「あ!」
悠希が声をあげた。
マキは口の中のパッキーを飲み込み、意地悪な笑みを広げた。
「先輩の負けですね。さ、お昼食いに行きましょう」
僕は真っ赤になりながら、マキに引っ張られ、教室を後にした。
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