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「先輩、まだ怒ってるんですか?」
後ろを歩くマキが僕に聞いてくる。
「怒ってない」
僕は答える。
「嘘ですよね?」
「嘘じゃない」
「じゃあなんでこっち向いてくれないんですか?いつもみたいに隣を歩かせてくれないし……」
少しばかり寂しそうにマキに言われ、僕は抱き着きたい衝動に駆られるが、グッとこらえる。
怒っていないのは本当だった。
ただ、恥ずかしくて、マキの顔が見れないだけで。
「そういえば、罰ゲームまだでしたね」
「罰ゲーム?!」
思いもよらぬ一言に僕は勢いよく後ろを振り向いてしまった。
マキはにやりと笑った。
「やっと顔見せてくれましたね。罰ゲームは冗談です。ただ、今日は大事な話があるので、このままうちに来てくれませんか?」
やられた。
マキは本当に僕の扱いが上手い。
……まぁ、そんなところも好きだけど。
にしても、大事な話、か。なんだろう?
マキの様子からして、悪い話ではないはずだ。
どことなく嬉しそうだし。
「うん、わかった」
僕がうなずくと、マキは僕に並んで歩き始めた。
「あ、そうだ、先輩」
「ん?」
「今日、先輩の隣にいた人なんですけど……」
僕の隣にいた人?
悠希のことだろうか。
「スマホで動画撮ってましたよ」
「え?どの?……まさか、あのパッキーゲーム中の……?」
「その時のです」
なんてこった。
悠希……なんでそんなことを……。
ていうか、マキ、気付いてたなら止めてくれればいいのに……!
僕絶対恥ずかしい顔してた!絶対してた!
「明日、消してもらう……」
「そうしてください。断られたら俺に言ってください。……無理やりにでも消させるので」
殺気だった声を出すマキ。
いやいや、なら止めればよかったじゃん?!
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