波乱

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波乱

 マキの家へのお引越しは、時間のある土曜日に行うことにした。  日曜日には、歓迎パーティをしてくれるらしい。  凄く楽しみだけど、僕にはその前に大事なすべきことがある。 「悠希、あのさ……昨日の、なんだけど……」  僕は後ろの席の悠希に話しかける。 「ん?どしたー?」  悠希はスマホから顔を上げ、首を傾げた。 「えっと、その……昨日のパッキーゲーム、動画、撮ってたり、した……?」  僕がそういったとたん、悠希は顔を真っ赤にして頭を下げた。 「……っぁぁぁごめんっ!」  がんっと頭を机にぶつけている。 「え、ちょ大丈夫?!あた、頭大丈夫?!」  何も知らない人が聞いたら失礼なセリフになってしまったが、それぐらいデカい音だったのだ。 「ごめん!!本当にごめん!!つい、出来心で……。消す!消すから!」  そうまくしたてると、悠希はスマホを操作し始めた。    なんか、こっちが言う前に消してくれた、けど……。  出来心で撮るってどういうこと……? 「消した!消したから!ほんとごめん!許して!!」  ぶんぶんと頭を下げる悠希。ちょっとしたロックバンドみたいで笑えてくる。 「いや、怒ってないけど……」 「ほんとっ?!よかったぁ……。引かれたらどうしようかと思ってたんだよ」  悠希は心の底から安心したように息を吐いた。  そして、周りに人がいないことを確認すると、小さな声で言った。 「なぁ、バレたついでに聞くけどさ……あのまきとかいう後輩と、どういう関係なんだよ?」  マキとの関係。  恋人、大事な人、大好きな人……。  でも、言っていいのだろうか。  男同士は、普通に考えておかしい。それはわかってる。  マキなら、どう答えるだろう……?
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