10人が本棚に入れています
本棚に追加
関係
たった二文字が、僕にのしかかる。
関係、関係……
マキなら、なんて答えるだろうか。
きっと、僕に配慮して、「ただの先輩、後輩の関係です」っていうだろう。
でも、僕が言っていいよ、っていったら。
マキは迷わず、「大事な恋人です」と言ってくれる。絶対。
じゃあ、僕は?
ここで、嘘をついたら、悠希に、マキに、奏さんに、自分の気持ちに嘘をつくってことじゃないのか?
そんなのは、嫌だ。
「悠希、あのさ、誰にも、言わないでくれる?」
「おうよ」
「あのね、僕とマキは……付き、合ってるんだ……」
消え入りそうな声で僕が言うと、悠希は一瞬驚いた顔をして、そのあと笑った。
「はは、やっぱり、そうか……。そう、だよなぁ……」
その乾いた笑いに、僕はドキドキした。引かれるんじゃないかって。
「やっぱり、って?」
「んー空さ、あの後輩といるとき、すげぇ嬉しそうなんだよ。だから、なんとなく普通の関係ではないなって」
なんてことないように悠希が言う。
「引いてない、の?」
「引かねぇよ。オレそういうの気にしねぇし」
悠希はにかっと笑った。
僕は嬉しくて、涙が出てきた。
「うぐぅ……ぐすっ……ありがと、悠希」
悠希は慌てて、僕にティッシュを差し出し、そして、ぎこちない手つきで頭を撫でてくれた。
「泣くなよ……」
悠希がぽつりとつぶやく。
何故だかそのつぶやきは、とても寂しそうに聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!