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目が覚めると、目の前に身だしなみを整えたマキがいた。
体に多少のだるさを感じる。
「おはようございます、先輩。さっきは取り乱してすみませんでした」
マキが照れくさそうに言う。
「ううん、僕は嬉しかったよ。マキの本当の姿も見れたし、本音も聴けたし」
「忘れて下さい……」
耳を真っ赤にして恥ずかしそうにうつむくマキが可愛くて、愛おしくて、僕は抱き着いた。
そのまま、頬に優しくキスをする。
「好きだよ、マキ」
「俺も大好きです」
言い合って、身体を離し、時計を見る。
「え、もう十時?!マキ、早く帰んなきゃ!」
「そうですね……じゃあ、先輩、明日8時に」
「うん。また明日」
マキを見送り、僕はお風呂に入ることとする。
マキを泊めてもよかったのだが、くそジジィとマキを会わせたくなかった。
さて、お風呂入って、くそジジィの帰りを待つこととしよう。
日付が変わって少したってから、ようやく玄関のドアが開く音がした。
「おかえり、くそジジィ。明日から僕いないから」
玄関で迎え、そういうと、くそジジィこと、僕の父は驚いた顔で言った。
「まだ起きてたのか……。いないって……」
「ここじゃないとこに住む。他人には迷惑かけないし、あんたにも迷惑かけない。一応言っといただけ。じゃ」
こんな言い方で一方的に言われただけなら普通は認めないものだろうけど、こいつは違う。
こんな時間まで遊んでるような奴だ。子供のことなんて気にしてない。寧ろ、いないほうが都合がいいのだろう。
こんな奴にマキに会ってほしくない、という気持ちと、こんなに性格の悪い僕をマキに見てほしくないのと半々ぐらい。
気分悪いことは忘れて、ぐっすり眠ろう。
明日からは、大好きなマキと過ごせるのだから。
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