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引っ越し荷物をすべて持って、僕はマキの家へ向かう。
今日からマキと一緒に住めるんだ……。
抑えきれない幸せをかみしめているうちに、マキの家が見えてきた。僕が走って道路を渡ろうとすると、車が突進してきた。
「わっ」
ギリギリで車は停止し、衝突は避けられたが、驚いて僕は悲鳴を上げてしまう。
「ごめんごめーん、大丈夫だった~?」
軽い声とともに、車から人が降りてくる。
「あ、はい。大丈夫です」
答えて、僕はじっとその男の人を見た。
どこかで見たことがあるような……?
金色の髪に、何個も開いたピアス。
はっきり言って、チャラそう。
「ん~?もしかして君、空くん?」
「え?そう、ですけど……」
なんで僕の名前を知ってるんだろう。
怪しい人なのか?これは。
「やっぱり……アイツの情報に間違いはねぇな……」
男の人はそうつぶやくと、おもむろに僕に近づいてきた。
「……?!んっ、むぅっ……」
口をふさがれ、口内に舌が入ってくる。
ぞわぞわとした。
気持ちよくて、じゃない。
あまりの気持ち悪さに、だ。
厭だ厭だ厭だ……!やめろやめろやめろ!
「先輩っ!」
マキの声がした。
あーあ、もう気付かれちゃった。じゃあね、空くん。また会おうね~」
男の人はそんなことを言って、車に乗って走り去った。
「先輩、大丈夫ですかっ?」
マキが駆け寄ってくる。
僕はマキに抱き着く。
怖かった。苦しかった。厭だった。
マキ以外とのキスが、こんなにも気持ち悪いなんて。
ぐるぐると気持ち悪さが回ってくる。
僕はどうしちゃったんだろう?
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