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足に力が入らず、半分運ばれるようにして、僕は家に入る。
「先輩、どうしたんですか?なんか変ですよ?」
心配そうなマキの顔が目の前にあって、僕はマキにキスをした。
「せんぱ、んっ」
逃れようとするマキの舌を追いかけ、吸いつく。
とろとろと唾液が顎を伝う。
僕は口を離し、マキに言う。
「ごめん、マキ……僕なんか変だ。気持ち悪くて、厭で厭でたまらないのに、頭の中は冷たい……みたいな」
「……っ」
嗚咽に似たうめき声が聞こえ、僕は気持ち悪さを耐えて、マキを見る。
「マキ?なんで泣いてるの?!」
ほぼ初めて見るマキの泣き顔に、僕は激しく動揺する。
なんで?僕が何かした?
「すみ、ませ、せんぱ……。あいつ、俺の兄貴なんです……」
突然の発言に、僕は一瞬理解をしかねる。
あいつ、というのはさっきの男の人のことだろうか?
「お兄さん?あの人が?」
「はい……すみません、俺がもっと早く気付けば……。先輩を迎えに行ってればよかった……」
泣きながら謝り続けるマキを抱きしめ、僕は優しく言う。
「落ち着こう?マキ。服着て、あったかいものでも飲みながらはなそ?」
腕の中でマキがうなずく。
マキにお兄さんがいたなんて初耳だ。
道理でどこかで見たことがあると思った。
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