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奏さんのためにもう一度コーヒーを淹れなおし、リビングに集合する。
奏さんはどうやら僕の歓迎会のごちそうを買いに行っていたらしい。なんか、そういうの初めてだから嬉しい。
「そう……彰希が来たの……。ごめんなさい、空くん。話しておくべきだったわね……」
「いえ!僕は別に……。ただ、ちょっとびっくりしましたけど」
いや、嘘です。だいぶびっくりしました。
「彰希、あれから危ない仕事ばっかりしてたみたいなの。親としてはちょっと無責任なことしちゃったな、って反省しているのだけど……。もう、どうにもならないものだから……」
奏さんは困ったように笑った。
僕はアキさんについて考えてみる。理由はわからないけど、あんなことをしたわけだし、許されなくて当然だ。でも、親に捨てられる苦しさは、僕にもわかる。
「さ、暗い話はおしまいにして、ご飯ご飯!空くん、甘いもの好きでしょ?ケーキ買ってきたから、後で食べましょ」
奏さんは手をパンっと叩き、立ち上がってキッチンへ行ってしまった。
僕は複雑な気分のまま、うつむく。
「先輩、あれは兄貴も望んでたことなんです。そんな顔、しないで下さい……」
マキが悲しそうな声で言う。マキには何でもわかってしまうんだな。
「ん、大丈夫。ちょっと思い出しちゃっただけだから。ケーキ、楽しみだな~」
僕が笑って言うと、マキは泣き出しそうな子供のような顔をした後、笑った。
そんなに気にしなくていいのに。マキが気にすることじゃないんだから。つらいのはマキも同じなはずなのに。僕は何もしてあげれない。
マキを不安にさせて、迷惑かけて。
僕がマキに何か与えることはできているのだろうか……?
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