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夜も更け、僕とマキは部屋に引き上げ、寝ることにした。
「先輩、下でいいんですか?」
ベッドの上のマキが僕に聞いてくる。普段なら僕もマキと一緒にベッドで寝るところだが、今日はなんとなくやめておくことにした。
「うん、大丈夫。おやすみ、マキ」
「あ、瀬戸先輩って先輩の後ろの席なんですよね?」
布団に潜り込もうとした僕に、マキが思い出したように聞いてくる。
「そうだけど……どうかした?」
「いえ……おやすみなさい」
……?変なの。
僕は不審に思いながらも、眠りについた。
「空くん、真希!起きなさい。今日は朝から晩まで飲むわよ!」
奏さんの美声で僕の意識は覚醒した。
「飲むって……俺らは飲めないし……。もうちょい寝かせて……」
マキがだるそうな声で抗議する。
この前のは演技だったけど、マキは本当に朝に弱いらしい。
「あら、真希が寝てる間に空くんデートしちゃおうかしら」
「だめ」
奏さんの一言で、マキはしゅばっと起き上がる。
さすが母親。マキの扱いになれている。
「さ、着替えて降りてらっしゃい。色々用意してあるから」
るんるんしながら奏さんが去っていく。
そうか、今日は歓迎会をしてくれるんだっけ。
「絶対自分が酒飲みたいだけだろ……」
呆れたようにつぶやくマキに僕は苦笑する。
マキの口調がちょっと荒いのが新鮮だ。いつも僕には敬語で丁寧だから。
今度、敬語禁止!とでも言ってみようか。
「先輩、多分酒飲まされそうになると思うので、気を付けて下さいね」
「うん?わかった」
奏さんが酔っ払って、ってことかな。
お酒に強そうなイメージがあったけど。
マキがあまりにも真剣な顔で言うので、僕は疑問をぶつけることなく素直にうなずいてしまった。
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