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「なんていうか〜。種明かしされちゃうと、ちょっと微妙だね〜」
「う、うん……もっと凄い事かと思ってた……霊力とか、ね」
『夢を壊してしまったかもしれませんね。ごめんなさい……』
知恵さんが申し訳なさそうに眉を下げたけれど昔の話を美化したり誇大妄想してしまうのは現代人の勝手で当時の人が話せば案外こんなものなのかもしれない。
「い〜のい〜の!知恵さんは悪くないじゃ〜ん。ねぇ?芽衣」
「うん。私達が勝手に妄想してたみたいで……」
〖っツーか、ホント女はペチャクチャよく喋るな。んで、クソ親父は?〗
まー君の言葉で翔君達の父親の遺体の事を思い出して申し訳ない気持ちもあるけれど二度と見たくもない気持ちもある。
『あらあら、あなたの父上。すっかり忘れていました。ここです。』
〖あ?土ん中!?まさかアンタ、ここに埋めたっツーのか?〗
『私は美しくないものには触れません。霊力で押し込みました……』
〖んじゃ、どうやって持ってきた?アンタ、こっから動けねぇよな?〗
またしても知恵さんのさり気ない失礼な一言が気になったけれど確かに動けないのに移動が出来たのは何故なのだろうと首を傾げていると珍しく面倒くさそうに溜息をついてから話してくれた。
私が粛清したあとに事故で亡くなった女性が彷徨っているのを見つけた知恵さんのもとによく来る井上さんという霊が女性を連れて来たそうだ。
女性は事故の事や高校生の女の子が消えたと話した事から私の事ではないかと考えた知恵さんは井上さんに方々の霊に伝えるように頼み翔君達の父親の遺体を見つけた。
そして遺体を運んでくるようにお願いをした知恵さんは遺体から天葛の気配を感じた為、霊力で土の中に埋めたという。
〖おい、井上のオッサンって──『ええ……喰われた井上です……』〗
頭にクエスチョンマークを出している私と彩月にまー君が井上さんという霊が天葛に喰われてしまった経緯を教えてくれた。
「あの……もしかして………その女性は……私のスマホを……」
『ええ……彼女から聞いて芽衣ちゃんだと確信しましたから……』
「その人は……どうなったんですか?」
『彼女は成仏しましたよ。もちろん事故も通報しておきましたから安心して良いのですよ。彼女は家族のもとへ帰れました……』
ホッとしている私のそばで電話するんだ〜と彩月が騒ぐと知恵さんは流石に直接は話せない為、事故現場に目立つ貼り紙をして通りかかった誰かが通報してくれるのを他の霊に見張ってもらっていたそうだ。
〖なるほどな。っツーか、スマホ依存。クソ親父埋めてどうすんだよ?〗
『私の霊力になります。そして天葛は弱ります……』
〖それってあれか?クソ親父が霧島の子孫だからっツーことか?〗
『ええ、それも理由ですが……この場所に意味があります』
「あ〜それ〜!私も気になってたんだよね〜。なんでここなの〜?」
私も気にはなっていたけれど聞くタイミングがわからず彩月ナイスと心の中でガッツポーズをしていると知恵さんが話し始めた。
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