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思わず顔を上げた私は、たぶんかなり間抜けな
顔をしていたと思う。
「専務はシャイな人ですからね。
婚約者に職場を見学したいと言われて、自分が
案内するのは恥ずかしかったんでしょう。」
「それで…美堂さんが?」
「ええ。
専務とは付き合いが長いので頼まれました。」
「でもっ美堂さんの婚約者だって聞いて…」
「噂が独り歩きしたみたいですね。」
何それ。
じゃあ、今までの私の言動全部かなり恥ずかしい
じゃん。
千晴に文句を言いたくなった。
でも、それよりももっと恥ずかしいことが。
だってさっきの私の発言って、美堂さんに告白を
しているも同然だったから。
あまりの恥ずかしさに逃げたくなった私は、無意識
のうちに距離をとろうとした。
「これで誤解は解けました。
ここからが本題です。」
然り気無く、私を逃がさないように壁にジリジリと
追い詰める美堂さん。
このシチュエーションは心臓に悪いから止めて
頂きたい。
特に今は。
「僕の気持ちは貴女に伝わっていなかったの
ですか?」
「…っ。」
近い。
顔がすごく近い。
「だって、下部になりたいとは聞きましたけど
好きとは一言も聞いてないです。」
「僕の中では最上級の愛の告白のつもりだった
のですが。」
「そんなの知りません。」
やっぱり美堂さんはおかしい。
「それに、タンブラーをもらった時に突然
目覚めたって言われたって…私のどこが
好きなのかなよく分からないですし…」
「ですから、あれは本当にきっかけに過ぎなかった
んです。」
「えっ?」
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