シモベにならない男

10/12
前へ
/103ページ
次へ
確かに前にもきっかけに過ぎないって言ってたけど それはつまりどういう意味? 「尽くすことに目覚めたのはあの時ですが もうずっと前から僕は貴女が好きでした。」 「ずっとって…」 予想外の発言に驚いてしまう。 でももっと驚いたのは、それまで真剣な表情を していた美堂さんが突然照れたように視線を 反らしてしまったから。 何だか可愛いって思ってしまう。 「一目惚れなんです。」 美堂さんは恥ずかしそうに、ボソッと呟く。 「この本社に来ることになる前に、一度だけ 見学に来たことがありました。 その時に貴女を見たんです。」 知らなかった。 海外支社からこっちに来るまでに、会っていただ なんて。 「ひどく疲れた顔をしていましが、ミルクティーを 飲んだ瞬間、笑顔になった貴女の姿から目が 離せなくて。」 「まさか、その時に…?」 「ええ。」 恥ずかしい。 まだ知り合っていない時に、そんな所を見られて いたとは。 「ですが本社に来て貴女に近づきたいと思い ましたが、自分から女性にアプローチしたことは ないのでどうしていいか分からず。」 それはそうだろう。 だって美堂さんなら、自分からいかなくても 女の子から近寄ってくるはずだから。 「そんな時、たまたま谷口さんとあのタンブラー の話をしているのを聞いたんです。 家に使っていない物があったのを思い出したので それを貴女にあげて、話すきっかけにしようと 思いました。」 「じゃあ、あのタンブラーは…」 「初めから貴女にあげるつもりでした。」
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加