シモベになりたい男

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心臓に悪いから止めて頂きたい。 その綺麗なお顔で見つめないでってば。 勝手に焦る私を他所に、美堂さんはこう続けた。 「ですが先日、貴女にタンブラーをあげた時に 突然目覚めてしまったのですから仕方ありま せん。」 「えっ?」 ───それは本当につい先日のこと。 書類の確認のため、美堂さんの元へ行った私の 目に飛び込んできたのは、デスクの上に置かれた オシャレなタンブラー。 それは某コーヒーチェーン店のもので、ネットで 見て欲しいと思っていたけどなかなか手に入らない ものだった。 何故なら海外限定のデザインだから。 普段は仕事以外のことで美堂さんに話しかける なんてしたことがなかった私は、その時初めて 自分から話しかけた。 『あのっ…そのタンブラーってどこで 買ったんですか?』 そんな私の様子に、美堂さんは少し驚いたような 顔をしていたような気がする。 海外支社に居る時に買ったものだと答えて くれた後、よほど私が物欲しそうにしていたのか 気を効かせて… 『まだ使っていないので、よかったらどうぞ。』 って、そのタンブラーをくれたんだ。 本当なら遠慮した方がいいんだろうけど テンションがぐぐっと上がってしまった私は 勢いに任せてもらってしまった。 その時の私は会社なのにも関わらず、恥ずかしい くらいはしゃいでいた気がして… 家に帰って冷静になって物凄く後悔したのに。 よりによってどうしてそれを蒸し返されなくちゃ いけないんだろう。
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